溶連菌感染症の抗菌薬は症状が消えても飲み切るべき?
内科
小児科
公開日
2026.6.15
更新日
2026.6.17

こんにちは!とどろきLAクリニック 小児科医の寺田です。
お子さんが溶連菌感染症と診断され、抗菌薬を処方された方の中には、
「思ったより薬の期間が長いな」と感じて、このコラムにたどり着いた方もいるかもしれません。
🌀 熱が下がったのに、まだ薬を飲み続けないといけないの?
🌀 子どもが嫌がっているし、もう元気そうだから途中でやめても大丈夫かな…
このように感じる方もいらっしゃると思います。
ただ、溶連菌感染症の抗菌薬(抗生物質)は、症状がよくなった後も最後まで飲み切ることが大切です。
そこで「シリーズ:溶連菌感染症を正しく知る」第4回では、なぜ抗菌薬を飲み切る必要があるのか、お子さんへの飲ませ方の工夫も含めて、わかりやすくお伝えします。
▶︎ 関連記事はこちら「溶連菌は家族・大人にうつる?感染経路・潜伏期間と家庭内感染を減らす方法」
🔸 そもそも溶連菌感染症の治療期間はなぜ「10日間」なの?
抗菌薬を飲み始めると、だいたい1〜2日で熱が下がり、3日目ごろにはのどの痛みも和らいでくることが多いです。
そのため、「もう治ったのでは?」と感じる方も少なくありません。
ただし、症状をよくするだけでなく、合併症を防ぐためにも、処方された日数を守ることが大切です。
米国感染症学会(IDSA)のガイドラインでは、溶連菌感染症はペニシリン系の抗菌薬を10日間投与することが推奨されています。
10日間治療することで、リウマチ熱という心臓に後遺症を残してしまう合併症を予防できるとされているためです。

🔸 途中でやめると何が起きるの?
リウマチ熱などの合併症につながる
症状が良くなった後も合計10日間抗菌薬を飲まなければならない理由のひとつは、「リウマチ熱」という合併症を防ぐためです。
リウマチ熱は、溶連菌感染症を起こしてから約3週間後に発熱や膝・肘の痛みなどを起こす病気です。
注意したいのは心臓に後遺症を残すことがある点で、リウマチ熱を繰り返すと、そのリスクが高くなるとされています。とはいえ、初回感染であっても後遺症は起こり得るといわれているため、しっかり予防したい合併症です。
なお、溶連菌感染症から約10日後にむくみやコーラ色の尿がみられる「急性糸球体腎炎」が起こることもあります。急性糸球体腎炎は抗菌薬を飲み切っても予防できないとされています。
▶︎ 関連記事はこちら「溶連菌感染症の合併症|リウマチ熱・腎炎について知っておこう」
耐性菌の問題
抗菌薬を決められた期間しっかりと飲み切る理由は、もう一つあります。
それは、治療を途中でやめたり、飲んだり飲まなかったりすると、抗菌薬の効かない耐性菌が出現し、治療が難しくなるためです。
さらに厄介なことに、この耐性菌は人から人へとうつるため、ご家族やお友達、ひいては日本中の感染症の治療が難しくなるおそれがあります。
対策をしっかりとらないと、2050年には耐性菌による感染症で亡くなる人の方が、がんで亡くなる人よりも多くなってしまうという試算もあります。
実は、溶連菌はペニシリンへの耐性が世界的に報告されていない珍しい菌です。
そのため、溶連菌をペニシリン系の抗菌薬で治療する場合に限っては、抗菌薬の効かない溶連菌が生じる可能性は高くありません。
しかし、耐性菌を生まないためにも、原則として処方された抗菌薬はきちんと飲み切るようにしましょう。

🔸 子どもに抗菌薬を上手に飲ませるコツ
🌀 抗菌薬の味を嫌がって吐き出してしまう…
🌀 残った薬は、次のために取っておいていい?
どれも気持ちとしてよく理解できます。
そこで、抗菌薬を上手に飲んでもらうコツをご紹介します。
混ぜてOK・NGなものを確認する
チョコレートアイスは苦みを隠しやすく、抗菌薬を混ぜても色合いが変わりにくいのでおすすめです。
見た目が気にならなければ、他のアイスでもかまいません。
一方で、以下のものは避けましょう。
❌️ ヨーグルト・乳酸菌飲料:苦みを強めるため
❌️ 柑橘系ジュース・スポーツドリンク:苦みを強めるため
❌️ 牛乳・ミルク:薬の作用が弱まったり、ミルク嫌いになったりすることがあるため
薬局で手に入る「服薬補助ゼリー」も便利です。
また、何かと混ぜるときには、1回で飲み切れる量に混ぜるようにしましょう。
個別の薬と食品の飲み合わせが気になる場合は、「国立成育医療研究センターのホームページ」が参考になります。
「決まったタイミング」で習慣にする
毎朝食後・毎夕食後など時間を固定し、カレンダーやシールシートに「飲んだ日」を記録してゲーム感覚にするのが効果的です。
「あと○日で終わりだよ」と子どもにゴールを見せてあげると、協力してもらいやすくなります。
どうしても飲ませられないときは相談を
1日飲めなかったからといって治療が台無しになるわけではありませんが、無理に続けようとしてお子さんも保護者の方もつらくなる前に、早めにご相談ください。
当院でも薬の種類の変更や飲ませ方のアドバイスをお伝えできます。
🔸 服薬後に確認しておきたいポイント
✅ 登園・登校の再開目安:登園・登校の目安は、熱が下がっていて、抗菌薬を開始してから少なくとも24時間以上たっていることです。園や学校のルールも確認しましょう。
✅ 服薬完了後の症状チェック:熱やのどの痛みが再び出てきた場合や、約10日後にむくみ・血尿が現れた場合は、早めに受診してください。また、約3週間後に発熱・肘や膝の痛みが見られた場合はリウマチ熱の可能性があるので、受診しましょう。
✅ 家族内の感染にも注意:溶連菌は家庭内でうつりやすいため、他の家族に症状が出た場合も受診をおすすめします。
🔸 よくある質問
Q. 10日間の途中で受診しなくても大丈夫ですか?
処方された薬を飲み続けていただければ途中での受診は必須ではありません。
ただし、3日以上熱が下がらない・症状が悪化している場合は受診してください。
Q. 残った抗菌薬を次に発熱したとき使っても大丈夫ですか?
抗菌薬は、処方された日数・量を守って飲み切ることが基本です。
そもそも抗菌薬は飲み残しがないのが理想的ですが、もし残ってしまった場合も自己判断で使うのは避け、廃棄しましょう。
🔸 まとめ|症状が消えても、抗菌薬を飲み切ることが大切
一般的に溶連菌感染症は、抗菌薬を飲み始めると数日で熱やのどの痛みが落ち着きます。
ただ、症状がよくなっても、リウマチ熱を防ぐために処方された抗菌薬は最後まで飲み切ることが大切です。
抗菌薬を嫌がる、吐き出してしまう、どうしても続けるのが難しい。
そんなときは、保護者の方だけで抱え込まなくて大丈夫です。
飲ませ方の工夫や薬の変更を検討できる場合もありますので、医師や薬剤師にご相談ください。
このコラムが、溶連菌感染症で治療をしているご家庭にとって、少しでも参考になればうれしいです。
【参考文献】
Shulman ST, et al. Clinical Practice Guideline for the Diagnosis and Management of Group A Streptococcal Pharyngitis: 2012 Update by the Infectious Diseases Society of America. Clinical Infectious Diseases, 2012, 55巻, 10号, pe86-e102
Centers for Disease Control and Prevention Clinical Guidance for Acute Rheumatic Fever
Kumar RK, et al. Contemporary Diagnosis and Management of Rheumatic Heart Disease: Implications for Closing the Gap: A Scientific Statement From the American Heart Association. Circulation, 2020, 142巻, 20号, pe337-e357
Centers for Disease Control and Prevention Clinical Guidelines for Post-Streptococcal Glomerulonephritis
Review on Antimicrobial Resistance (Chaired by Jim O'Neill) Antimicrobial Resistance: Tackling a Crisis for the Health and Wealth of Nations. 2014
Centers for Disease Control and Prevention Clinical Guidance for Group A Streptococcal Pharyngitis
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